『ケイゾク』を見ました
『ケイゾク』とは
『ケイゾク』は中谷美紀演じる新米刑事・柴田純と渡部篤郎演じる刑事・真山徹がコンビを組んで迷宮入りした事件を解決していくドラマです。『ケイゾク』は1999年1月から3月にかけて連続ドラマとして放送され、同年12月にはスペシャルドラマが放送されました。翌2000年3月には劇場版が公開されています。
『ケイゾク』の舞台は迷宮入りした事件を扱う部署警視庁捜査一課弐係です。弐係は警視庁内の主流を外れた人たちが配属される部署で、東大卒キャリアの柴田は二係に研修生として配属されました。柴田が配属されるまでは弐係は典型的な”窓際族”としてのらりくらりと時間をつぶしていました。しかし柴田が配属されてからは変わり者の柴田が依頼人の変わった話に興味をもってしまうため色々な事件の捜査に乗り出していくことになります。連続ドラマの第7話までは依頼人が弐係に相談してきた迷宮入り事件を1話完結で解決していくストーリーです。柴田と真山がコミカルな掛け合いをしつつ捜査を進めて最終的には柴田がその天才的な推理力で事件を鮮やかに解決します。
しかし第8話以降は真山の宿敵である朝倉と真山の対決にストーリーが徐々に移っていき連続ドラマ終盤では快楽殺人犯・朝倉との対決が描かれます。朝倉は過去に真山の妹を輪姦して自殺に追い込んだ少年5人組の主犯格であり真山は朝倉を監視したり尾行したりしてずっと追っていました。真山と朝倉の因縁が柴田や弐係、捜査一課を巻き込み警察内部の問題を秘密裡に処理する特殊部隊SWEEPも出動して重大な事件に発展していくことになります。
『ケイゾク』作品の構成
『ケイゾク』全作品を視聴するのにかかる時間は?
『ケイゾク』各作品の長さは次の表のようになります。合計時間は719分であり、約12時間ということになります。
時間(分) | ||
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連続ドラマ | 1話 | 46 |
2話 | 46 | |
3話 | 46 | |
4話 | 46 | |
5話 | 46 | |
6話 | 46 | |
7話 | 46 | |
8話 | 47 | |
9話 | 46 | |
10話 | 46 | |
11話 | 46 | |
スペシャルドラマ | 94 | |
映画 | 118 | |
合計 | 719 |
雑感
今から20年ほど前の作品であり登場人物の持ち物やファッションには時代を感じますが、演出に関しては今見てもまったく時代を感じさせないスタイリッシュな作品でした。まず何といってもテレビ版のオープニングのタイトルバックがかっこいいですね。『ケイゾク』のタイトルバックは無機質で暗鬱な印象を与える写真が次々と切り替わっていくというつくりになっていて前衛的です。オープニング曲は坂本龍一が担当していて中谷美紀が歌っています。これもタイトルバックに合っていてまたいいですね。
『ケイゾク』全作品を見終えて、作品全体の底を無機質な空気が流れている点が印象的に感じました。弐係の刑事たちがギャグを言ったり柴田が愛について語ったり真山が殺人犯に激高したりと局所的にはウェットな部分はあるのですが作品全体を引きで見てみると非常に無機質な印象を受けます。この作品全体の印象とタイトルバックの雰囲気がよくマッチしていてその点も非常に良いです。
現代社会は法律や社会のルールなどによって一見万遍なく覆われているように見えるが実際は色々なところに社会の歪みが隠されている。そしてふとしたきっかけで暴力が表に現れ理性の手には負えなくなる。『ケイゾク』ではそんな世界を描きたかったのだと感じました。ドラマ終盤やスペシャルドラマのラストの流血シーンは筆者にとって見るのが辛いものでした。グロテスクなシーンを描くことで視聴者に理屈では説明できない世界を印象付けたかったのだと考えます。『ケイゾク』には解釈が難しいシーンもあり、視聴者を置いて行って進んでしまうようなところがあります。よくこんなグロテスクかつ解釈が難しい作品をテレビで流せたものです。視聴者が十分に理解可能で予定調和のうちに進む作品が良い作品であるわけではないので作品の制作者には自身が作りたい世界を作ってほしいものです。ただ視聴率や利益の関係で制作者の思うままに作品を作れないのは残念なことでもあります。
ドラマ前半では柴田は方向音痴や遅刻癖をもつ冴えない一面をもった刑事でとぼけた表情をしていましたが、後半に進むにつれ覚悟を決めていき表情が凛としたものになっていくのが良かったですね。
真山が真実はあいまいでありある真実を記憶している者がすべて消えたら真実も無くなるのだという趣旨の発言をしていました。心臓が止まるまで真実をひたむきに追うという言葉も作品中ででていきます。ナイーブに真実は一つであるというところに落ち着かないことがこの作品の世界を重層的にしていると感じます。快楽殺人犯・朝倉が死ぬことで命を永遠のものにして憎しみのない世界にするといったことを何度も言っていてこれは理知的に考えてみると支離滅裂で受け入れがたいものですが、暴力が支配する世界になったとき朝倉の思い通りになってしまうことは恐ろしいです。そんなときに真山が命をかけがえのないものとして大事にしてくれて朝倉に立ち向かっていってくれたことに筆者は救われました。
一つ文句を言いたいのはドラマ前半のコミカルなストーリーと後半のシリアスなストーリーの落差が大きすぎることですね。ギャグが面白くて演出がかっこいいドラマだなと思って見始めたらいつの間にか話は重くなっていきグロテスクなシーンを見させられていました。今から考えてみればこれは堤幸彦監督がドラマ後半で表現したかった世界を視聴者に見させるための戦略だったのだと思います。いきなり難解なものを見せては視聴者が付きませんから。ただ、ドラマ前半があったおかげで『ケイゾク』の世界に触れることができたのは筆者にとって大きな収穫です。